
結論:完璧じゃなくていい。実習とは、患者さんから学び、「今の自分にできること」「これから学ぶこと」に気づかせていただく場所。
実習が不安な看護学生さん、実習始まりましたか?
看護学生のみなさん、こんにちは。
学習が進み、いよいよ実習の準備に入っていますでしょうか?
実習が始まっている方も、これからの方も多いと思います。
準備や事前学習に追われ、実習開始のその日が近づくにつれ、不安に過ごしている看護学生さんも多いと思います。とてもナイーブな気持ちになっている方もいるかもしれませんね。
実習は、これまで教科書で学んできた看護の知識を、
“実際の現場”で経験として深めていく大切な機会です。
その一方で、初めて見る疾患や患者さんの姿にショックを受けたり、
プレッシャーに押しつぶされそうになることもあるでしょう。
今回は、そんなあなたに向けて、
実習前に知っておきたい3つの心構えと準備のヒントをお伝えします。
実習前に知っておきたい3つの心構えと準備のヒント
ヒント1:「なんか知ってる」まででOK!事前学習のコツ
各診療科や対象疾患の解剖・病態・診断・治療について、
事前に学んでおくことはとても大切です。自分なりの方法で整理して学習をしっかりしましょう。
…でも「完璧に覚えよう」としなくても大丈夫!
目指すのは 「あ、見たことある」「なんか聞いたことある」 という状態。この状態で実習に臨み、具体的に実際の現場で知識を深めてください。
そうすることで、
現場での患者さんの様子や検査結果と知識がつながりやすくなります。
“座学”が“体験”に変わる感覚を、自分の体験で、自分の中にしっかり落とし込んで、ぜひ味わってくださいね。

事前学習は必須です!課題を持って臨むことで、自分の知識を深掘りして、体験を自分のものにしましょう!
ヒント2:情報収集は“人としての関わり”がカギ
学生さんの実習は情報収集が最も大切といっても過言ではありません。ここに全てがあると言っても良いでしょう。情報がなければ、必要な看護も見つからないですよね。
実習に行ったら、まず情報収集に力を入れようと心がけましょう!
しかし、患者さんの情報収集はとても大切ですが、
「観察項目を全部聞かなくちゃ!」と焦るあまり、
一方的に質問をしてしまいがちです。
まずは患者さんの生活や背景、人となりを知ろうとする姿勢が大切です。患者さんのところに行く前に、意識することをまとめました。
- 聞く内容は事前にメモで整理
- 病室に入る前に「今日はこれを聞く」と確認
- 笑顔で挨拶してから、「お話を伺いたいことがあります」と一言添える
- 聞く前に“聴く”姿勢を大事にする
- 患者さんと目を合わせる位置に体を合わせる(しゃがむ、膝立するなど。)

患者さんへのの声かけのポイントはここ↑。患者さんに「あなたの話をしっかり聞きますよ!」と伝わるように耳を傾けましょう。大丈夫、緊張せずにいつもの自分で関わってみましょう!
患者さんも“あなた”という存在を見ています。
無口な方も、あなたに警戒しているだけかもしれません。
その人なりの関わり方があることを忘れずに、丁寧に接しましょう。
患者さんとの会話についての記事は過去にも紹介していますのでそちらも参考にしてください。
→看護学生の悩み|患者さんとうまく話せない時の接し方と心構え
ヒント3:基本ケアに心を込めて、自分にできる看護を届けよう
学生さんが実習中にできる看護ケアは、清拭や爪切り、口腔ケア、足浴など、
いわゆる“基本ケア”が多いかもしれません。「私にはこれくらいしかできない」なんて思わないでくださいね。
それは“患者さんにとって必要な看護”で、とても心地よいものです。
実際の医療現場では、どうしても優先順位をつけて行動します。
命に関わること、治療を優先しなくてはならない時、突発的な状況への対応など、スタッフは業務が多忙でじっくりとケアできないことも多くあります。
学生さんの手によって丁寧に行われたケアに、
患者さんが安心感を抱き、様々な大変な状況を過ごす中にも、癒しを届けることができます。
あなたができることを、自信を持って、丁寧にしましょう。
それが、”あなたにしかできない看護”になります。

看護学生さんは自分に自信がない分、「私なんて、、、」と思いがち。患者さんはそんなことより、あなたの看護を必要としていますよ!
今でも忘れない、私の実習での体験。
私が学生時代に担当した、脳梗塞で寝たきりの患者さんがいらっしゃいました。
言葉もなく、反応もほとんどできない方でしたが、
一生懸命、笑顔と声かけを行いました。清拭、シャンプー、口腔ケア、爪切り、よもぎ手浴、足浴など、私にできる基本的なケアを精一杯行わせていただきました。
そして2週間はあっという間にすぎ、最終日、ご挨拶をしたとき、
その方が動かないはずの手で、私の手をしっかりと握ってくださいました。
手を握るという言葉で、患者さんは私を受け入れてくださっていた。驚きと嬉しさと、感動、感謝、安堵感、、、私は間違っていなかったと思える瞬間で、とても良い涙が溢れてきたことをよく覚えています。

今ブログを書いている中でも、思い出し泣きしそうになります。
これぞ看護!自分を認めていただけたと感じた、とても重要な経験になりました。人間と人間の間で、会話がなくとも伝わるのだなあ、と感じとることも、この時に初めて経験しました。
みなさんにも、そんな経験ができるといいなあと思っています!
実習とは、患者さんから学び、気づかせていただく時間でもあります。
最初は「自分にできるかな…」「失敗しないようにしなくちゃ」と、
“自分”を主語にしてしまうのが自然です。
でも、実習を通してだんだんと、
「患者さんが〇〇であってほしい」「〇〇してあげたい」
と“患者さんが主語”になっていくんです。
この変化こそが、あなたの成長です。
焦らず、恐れず、感じたことを大切にしてくださいね。
実習体験の悩みの種は、成長の花を咲かせる第一歩
実習での反省点の考え方
そして実習中は、自分の感情の浮き沈みもあります。
思うようにいかない日もあるし、指導者に言えなかったことを一人で抱えてしまうこともあるでしょう。
そんなときは、「患者さんにどうなっていただきたいか?」と自分に問いかけてみましょう。自分ができなかったこと、反省した内容は全て患者さんへつながっています。致命的な失敗をしなければ、それでいいのです。実習は、小さな失敗をしに行くようなものです。
その悩みは、今は辛くても、前に進むことしかありません。そしていづれは結果的に自分の成長へつながっていきます。
反省して自分を責めるのではなく、振り返ることで、前に進める、大きな一歩を踏み出せるでしょう。

実習はいい意味で、悩みに行くようなものです。失敗は成功の元ですね。それなら学生のうちにたくさん失敗を経験して、早く成功しちゃいましょう!学生さんは、伸び代たっぷり!それも自分の強みですよ!
自分の比べるべき相手は、昨日の自分
また、グループ実習では仲間との関係も悩みのひとつです。
周囲が優秀に見えたり、自分だけできていない気がすることもあると思います。
そんな時は、他人と比べるよりも、「昨日の自分」と比べてみましょう。
実はこの考え方は、「教育の現場」でも大切にされていることなのです。
文部科学省が示す「主体的に学ぶ力」とは?
文部科学省は、子どもたちの学力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性等」という3つの柱で捉えています。
この中で特に注目したいのが、「学びに向かう力・人間性等」です。
文科省の資料では、以下のように述べられています:
「学習の成果を他者と比較するのではなく、自身の成長の過程を振り返り、次の目標を立てていく姿勢が重要である。」
(参考:文部科学省「新しい学習指導要領の考え方」 より *このリンクはPDFです。)
つまり、学ぶことの本質は、「他人より上手にできたかどうか」ではなく、自分の中にある小さな成長を見つけていくこととのことです。
できなかったことが、少しできるようになった
前よりも、自信を持って発言できた昨日より、ほんの少し早く行動できたそれらはすべて、立派な“成長”です。人と比べることより、自分をちゃんと見つめてあげることが、長い目で見た成長につながります。
昨日より一つでもできていることを意識すると、できたことに目を向けて考えられますね!これは実習だけの話ではなく、ずっと自分で持つべき課題だと思います。
昨日より何ができたのか、できなかったのか、明日はどうしたいのか、何を気をつけたいのか。
実習中は学校の先生や臨床指導者さんが評価、アドバイスをくれる状況にありますが、現場では、ゆっくりとそんな時間も取れず、自分で自分を評価し、次に繋げる課題を持つこと。この繰り返しです。
あなたのペースで進んで大丈夫です。
そして、実習最終日には「関わらせていただいた患者さんに、ちゃんとお礼を伝える」ことを意識してみてください。人との出会いは一期一会。
あなたの成長は、患者さんとの出会いの中にあります。しっかりと感謝しましょう。

自分に自信が持てなくてもいいのです。自分自身をしっかりと知って、昨日より一つでも何かできたらそれでいいのです。そんなにすぐに自信つく人なんていません。
患者さんへの感謝の気持ちを忘れずに、その出会いを大切に。人に感謝できる人は、多くの信頼が積み上がり、結果的に自分に返ってきます。いづれ返ってくるのを楽しみに、今は努力を先出ししましょう!
1日の終わりに「自分褒め振り返りタイム」を作ろう
実習中は、毎日があっという間に過ぎていきます。
そんな中でも、ほんの5分でいいので「自分を褒める今日の振り返り」の時間を作ってみてください。
その日に経験したこと、うれしかった言葉、反省したこと、感じたことを簡単に書くだけで、
自分の成長を実感しやすくなります。
そしてそれをしっかりと褒めましょう。褒めれる部分を見つけられることは、とても大切なことです。
「今日の“できたこと”をひとつ」
「明日は“これを頑張ってみよう”をひとつ」
「私よくやった!私できてる!」そんな励ましを自分でできることが大切ですね。
こうした小さな習慣が、あなたの心を整え、
自信にもつながっていきます。

とにかく自分を褒めること!誰も褒めてくれなくても、自分で褒めることはいつでもできます!これを習慣にして、自己肯定感を高めてポジティブ看護学生に!
まとめ:実習は“できる自分”を探す場ではない
この記事のまとめです。
ヒント1:「なんか知ってる」まででOK!事前学習のコツ
ヒント2:情報収集は“人としての関わり”がカギ
ヒント3:「私には(私なんて)これくらいしかできない」じゃない。基本ケアに心を込めて
さて、この記事を読んで、実習に対しての不安な気持ちは少しでも和らぎましたか?
看護学生における実習の負担は心身ともにとても大きいと思います。でもその分、自分の成長を自分自身で、大きく実感できることでしょう。
実習は、特別な何かができなければいけない場所ではありません。
むしろ、「今の自分にできること」と、「これから学ぶこと」に出会う場所です。
肩の力を抜いて、
目の前の人を大切にする気持ちを、どうぞ忘れずに。
そして様々な経験をしてください。経験=自分の成長です!
応援メッセージ

これから実習を迎えるあなたへ。
怖くて当たり前、不安で当たり前。
でも、あなたのそばには支えてくれる人がたくさんいます。
看護はチームで行うもの。
あなた一人で抱え込まなくて大丈夫です。
あなたの優しさは、きっと誰かの支えになります。
大丈夫、あなたは看護の道を歩き出せていますよ。
まずは笑顔で「おはようございます」から始めてみましょう。
それが、患者さんとの大切な一歩になりますよ。応援しています。

miu|助産師・2児の母・ブログ運営中
20年以上、病院で助産師として勤務。新人時代の不安や戸惑い、子育てと仕事の両立に悩みながらも、周りに支えられてここまできました。
このブログでは、助産師学生・看護学生、そして働くママたちが「今日もがんばったね」「ちゃんとやってるよ」と、自分を優しく認められるような言葉を届けています。
あなたがちょっとだけ元気になれる、そんな場所になりますように。