
結論: その悩みは、あなたが患者さんを大切に思っている証です。”聴く力”がいちばんの信頼関係を作ります。
はじめに|患者さんとうまく話せない…その悩みは成長の証
こんにちは、miuです。
ゴールデンウィークが終わり、学生の皆さんは授業が再開されましたね。そして近々、実習場所の見学やオリエンテーションなども始まる頃かもしれません。早いところでは、始まりましたかね?
実際の現場に足を踏み入れると、年齢も、性別も違う、初対面の患者さんと関わらせていただくことになります。そして、いざその現場に立ってみると、「何を話していいかわからない」「病状を聞いてもいいの?」「どう接したらいいの?」と、緊張と不安で無言になってしまったり…。考えただけで不安が押し寄せてくることもあるでしょう。でも大丈夫、その不安や悩みがある時こそ成長の証です!これから学んでいけば大丈夫です。
今日はそんな不安を抱えている看護学生さんへ、患者さんとのコミュニケーションの取り方、心構えについてお伝えしたいと思います。
“看護学生でも医療者”としての意識を持つこと
まず意識してほしいのは、「白衣を着ている時点で、患者さんから見れば看護学生のあなたも“医療者”である」ということです。

えー!私なんてまだ学生で専門的なことなんてわからないし、そんなふうに言われても…。どうしよう…。
びっくりしますよね、急に言われても困るかもしれません。
でも、患者さんからしたら、具合が悪くて病院にきており、気持ちもつらく、誰かにすがりたい気持ちで来院する方もいらっしゃいます。たとえ学生であっても、白衣を着て病棟に立てば、患者さんから見ればあなたも立派な医療者の一人です。助けを求めているのです。
まずは白衣を着ている時点で、あたなは医療者です。これを自覚しましょう。
患者さんはあなたのという学生肩書きよりも、「どう接してくれるか」を見ています。
何もできないなんてないですよ。お話を聞いて、現場の看護師さんにつなげることができますよね。それだけでも患者さんの問題解決につながります。立派なサポートです。
だからこそ、言葉遣い・態度・姿勢には丁寧さと敬意をもって臨みましょう。
たとえ年下の患者さんでも、敬語で、礼儀正しく関わることが信頼につながります。

患者さんは調子が悪くて病院にいらっしゃいますが、普段はご自身の、それぞれの生活がある方です。様々なバックグラウンドをお持ちの方がいらっしゃいます。そのことを自覚し、まずは敬意を持って、丁寧な対応を行いましょう。
挨拶と自己紹介は、信頼関係の第一歩
患者さんと関わる第一声、それが「挨拶と自己紹介」です。
しっかりと目を見て、明るい声で「おはようございます」「失礼します」と挨拶するだけで、印象は大きく変わります。
そして笑顔も忘れずに、患者さんが安心して関われるなという印象を持ってもらえるように意識してみましょう。特に具合が悪い状況にある方は、あなたの笑顔で、元気をもらい、「なんか大丈夫な気がする」と思ってくださいます。
また、患者さんの体調や状況に配慮しながら、声のトーンを調整することも大切です。おやすみされている患者さんに対して大きな声の挨拶は、驚いたり、不快に感じる方もいらっしゃいます。相手の状況に合わせて調節しましょう。
そのうえで、
「〇〇学校の△△と申します。今日からこちらの病棟で実習させていただきます。何かあればすぐにスタッフに伝えますので、よろしくお願いします。」
というような、簡潔で安心感のある自己紹介ができるとベストです。緊張するかもしれませんが、患者さんも安心して接してくれます。

特にお年寄りは、若い学生さんが来ると、たくさんお話をしてくださいます。そのいっときかもしれませんが、お話しする姿はイキイキとされ、元気にされます。学生さんの存在は、とても貴重で大事なものです。その自覚を持って実習に臨みましょう。
いつも医療者で|会話中にも“観察”を忘れずに、五感をフルに活用して
そして、看護学生の皆さんは、いつも医療者である必要があります。患者さんとの会話は、単なるおしゃべりではありません。患者さんの状況を把握する絶好の機会です。
例えば…
- 表情はどうか、目線は落ちていないか(視覚で顔色を確認)
- 声のトーンに変化はないか、呼吸は穏やかか(聴覚で呼吸音を聞き)
- 手は震えていないか…(触覚で皮膚の冷たさ、手の震えはないか、むくみはないか)
- 変な匂いはしないか…(嗅覚で異常な匂いに気づく)
こうした微細な変化を見逃さず観察することも、実習で大切な力です。いつもとなんか違う気がする、という感覚も大切なことです。
情報収集は“聞く”だけでなく、“気づく”ことも含まれているのです。

看護学生の実習は、病態を把握することも必要ですが、患者さん自身を理解するために、自分の感覚をフル活用する機会も大切となります。皆さんの5感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)をフルに使って感じ取りましょう。そしてそれを言語化する訓練も必要です。うまく言語化できなかったら、そのまま指導者さんに「何かわからないけれど、なんかいつもと違います!」と報告しましょう。それも大事な気づきです。
“聴く力”がいちばんの信頼関係|聞いていることを”見た目”で伝えよう
そして、聴いている事をしっかり患者さんに見た目や態度で伝えることもとても大切です。看護や助産の現場では。「言葉よりも、見た目や態度から”聴いてくれている”と伝わるかどうか」が信頼関係に大きく影響します。
患者さんは、自宅とは違う環境に、緊張や不安を抱えて入院しています。そんな中で、しっかりと聴いてもらえること、耳を傾けてもらえることは、何よりの安心になります。
では、しっかりと聴いていると伝わる『見た目の態度・しぐさ』についてご紹介します。
行動 | ポイント |
---|---|
うなづき | 「はい」「うんうん」とリズムよく、相づちとうなずきで気持ちを受けとめる姿勢を見せる。 |
目を見る | 適度に目を合わせる(見つめすぎず、優しく)。視線が合うことで「関心を持っている」と伝わる。 |
体の向き | 患者さんに体を向けることで「あなたの話に集中しています」という意思表示になる。 |
身を乗り出す | 少し前かがみになる姿勢は、「興味を持って聴いている」のサインになる。 |
表情 | 相手の話に応じて表情を変える(困っている時には共感の表情など)。 |
相づち | 「そうなんですね」「それは大変でしたね」などの一言が安心感を与える。 |
信頼される「聴く姿勢」を伝える6つのポイント一覧表
患者さんに「しっかり聴いてもらえている」と感じてもらうために大切な、目に見える態度やしぐさ(非言語的コミュニケーション)の具体例をまとめています。
では逆に、どんな態度がしっかりと聴いてもらえていないと感じられるのでしょうか。
しっかりと聴いていないと感じられる『NGな見た目としぐさ』を紹介します。
行動 | 説明 |
---|---|
視線が合わない | ずっと資料やメモ、PCばかり見ていると「話を聴いていない」と感じさせる。 |
腕組み | 心を閉ざしている印象を与えがち。無意識に出ることがあるので注意。 |
足を組む/貧乏ゆすり | 落ち着きのない印象や、無関心に見えることがある。 |
時計や周囲をチラチラ見る | 「早く終わらないかな」と思っているように感じさせる。 |
無表情・反応がない | 相手が「伝わってないのかな」と不安になり、話す意欲がなくなる。 |
患者さんに「聴いてもらえていない」と感じさせるNGな態度・しぐさ一覧
視線が合わない、腕組み、時計を見るなど、相手に不信感や不安を与える非言語的な態度を具体的にまとめました。信頼関係を築くうえで避けたい行動を確認しましょう。
信頼関係は「非言語コミュニケーション」が7割以上、有名なメラビアンの法則では、人は「話の内容(言語)」よりも、態度・表情・声のトーン(非言語)を重視して相手の本音を感じ取ると言われています。(参考:Wikipedia「メラビアンの法則」)態度やしぐさがどれだけ大切かということがわかりますね。
たとえ短い関わりでも、「あなたに話してよかった」と思ってもらえるような、あたたかい傾聴を大切にしてくださいね。
傾聴は“気持ちを引き出し、患者さん自身の解決”の支援
患者さんが今どんな思いを抱えていて、何を大切にしていて、どうしていきたいと思っているのか。
その想いや希望に耳を傾け、一緒に言葉にしていくこと。それが、コミュニケーション、傾聴のもう一つの大切な役割です。
あなたとの会話が、患者さん自身が気づいていなかった感情に気づくきっかけになるかもしれません。
患者さんにとって、“自分の気持ちを言語化する”ことは、安心にもつながり、その後の医療やケアの方向性にも影響します。
【助産師として関わる私の実体験】
私も日々、助産師外来で産後のお母さんたちとお話しさせていただいています。
お母さんたちは毎日赤ちゃんのお世話を頑張っている中で、
- 「授乳方法はこれであってるのかな…?」
- 「もっと上手におっぱいを上げられるはずなのに、、、。」
- 「ミルクの量はあっているのかな、赤ちゃんはもっとほしいのかな、あげすぎなのかな?」
と、迷いや不安の中で育児をしています。
そんなとき、私は「その気持ち、よくわかりますよ」とまずは受け止めることから始めます。
正しい答えを押しつけるのではなく、相手の背景や気持ちに耳を傾けて、一緒に考えていく時間を大切にしています。
【“あなたはどうしたいですか?”という問いがもたらすもの】
そして私が助産師外来でお母さんたちと関わるとき、その状況に合ったアドバイスをさせていただいた上で、最後に必ずお聞きしていることがあります。
「お母さんは、どうしていきたいですか?」
「ご自身では、どうしたいと感じていますか?」
育児には、“これが正しい”という唯一の答えはありません。
大切なのは、その人自身がどうしたいのか、どんな子育てをしていきたいのかという思いです。
お母さんとご家族の生活のリズム、価値観、やりたいことに合わせて、
その人なりの育児を築いていくことが、”そのご家庭の“正解”になるのです。
【それぞれの正解があっていい】
もちろん、赤ちゃんの命に関わるような重要な判断や、成長・発達に合わせた助言は、専門職として必要なことです。
でも、育児や生活のスタイルにおいては、“お母さんの考えが正解”になるのです。
どのやり方がいいかを、私たちが一方的に決めることはできません。
患者さんやお母さん自身が、話す中で自分の気持ちや考えを整理し、自然に答えを見つけていけるように、そのお手伝いをするのが私たちの役割です。
【その問いかけは、学生さんにもできること】
これは、学生さんができる患者さんとの関わりにも通じます。
「どうしたいと思っていますか?」
「どんなふうに過ごしていきたいですか?」
そんな一言が、患者さん自身が自分の気持ちを見つめなおすきっかけになることもあります。
情報を集めるだけでなく、相手の考えや気持ちを引き出す関わりを意識してみてください。

皆さんも、誰かに話しているうちに、考えがまとまったり、誰かの言葉で自分が気づかなかったことに気付いたりすることはないですか?私たちの専門職では、その専門の知識を持った上で、患者さんそれぞれの考え方、気持ちの整理をお手伝いしていくことが必要です。家族でもなく、友人でもない、第3者であるけれど専門の人。そんな対象だから話してくれることも多いです。
看護学生さん、“話せない”と悩む前に、患者さんを主語にしよう
学生の皆さん。実習中や見学で、患者さんとどう話せばいいかわからず、「緊張してうまく話せなかった…」「何を話したらいいかわからない…」そんなふうに悩むこと、たくさんあると思います。
でも、そのときに、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてください。
「今、私の主語は“自分”になっていないかな?」
「自分がどう見られるか」「うまくできるか」そう考えるのは自然なことです。誰でも通る道です。
でも、”コミュニケーションの主語は患者さん”のはずです。
「この患者さんは、どうしてほしいのかな?」
「患者さんは何を感じているのかな?」
その視点に立つことができたとき、言葉に詰まっても、沈黙になっても、ちゃんと“つながる関わり”ができます。
もちろん、初めは自分のことに精一杯でも大丈夫。でも、私たちの仕事は「患者さん」が主語です。
患者さんがどうなりたいのか、どうすれば安心して過ごせるのかを考えることで、自然と寄り添った関わりができるようになります。

実習自体は、『私の実習』ですよね。もちろん間違っていません。でも、看護の現場では、「患者さんがどうなってもらうために、自分はどう実習をするのか」ということになります。言葉の微妙なニュアンスですが、とても重要なことです。
まとめ|あなたの関わりは、必ず誰かの支えになっています
さて、今日の記事はいかがだったでしょうか?もう知っているよ!という内容もあったかもしれません。でも実際に行動に移せたでしょうか?
人とのコミュニケーションは、経験しないと身につかないものです。実習はそれを訓練するところでもあります。そして多分、課題が見つかります。失敗もあるかもしれません。でもそれでいいのです。新たな発見が見つかって、大きく成長することにつながるのですから。まずは行動してみましょう!
実習での失敗や反省についての記事はこちらでも紹介しています。参考にしてみてください。→不安な看護学生へ|実習前に知っておきたい3つの心構えと準備
そしてもう一つ。大事なことです。学生という立場でも、あなたの存在は、患者さんにとって意味のあるものです。
上手に話すことや、立派なアドバイスができることよりも、目の前の人を思って関わる気持ちが何より大切です。だから、自信がなくても大丈夫。まずは、「あなたが主語の関わり方」から、「患者さんが主語の関わり方」へ少しずつ視点を変えて関わってみましょう。
あなたの一言が、あなたの笑顔が、きっと誰かの安心につながっていきますよ。
コミュニケーションに正解はありません。大切なのは、「この患者さんのために何ができるだろう」と考える姿勢です。あなたのまっすぐな想いとやさしさは、きっと患者さんの心に届きます。大丈夫。
自分の言葉で、笑顔で、あたたかく関わろうとするあなたを、私は心から応援しています。がんばれ!

miu|助産師・2児の母・ブログ運営中
20年以上、病院で助産師として勤務。新人時代の不安や戸惑い、子育てと仕事の両立に悩みながらも、周りに支えられてここまできました。
このブログでは、助産師学生・看護学生、そして働くママたちが「今日もがんばったね」「ちゃんとやってるよ」と、自分を優しく認められるような言葉を届けています。
あなたがちょっとだけ元気になれる、そんな場所になりますように。