
”聞く力”がいちばんの信頼関係をつくる
🌸心の結論: その悩みは、あなたが患者さんを大切に思っている証です。
はじめに
ゴールデンウィークが終わり、学生の皆さんは授業が再開されましたね。そして近々、実習場所の見学やオリエンテーションなども始まる頃かもしれません。
実際の現場に足を踏み入れると、「何を話していいかわからない」「病状を聞いてもいいの?」「どう接したらいいの?」と、緊張と不安が押し寄せてくるものです。
今日はそんな不安を抱えている看護学生・助産師学生さんへ、患者さんとのコミュニケーションの取り方についてお伝えしたいと思います。
“学生でも医療者”としての意識を持つこと
まず意識してほしいのは、「白衣を着ている時点で、患者さんから見ればあなたも“医療者”である」ということです。
たとえ学生であっても、白衣を着て病棟に立てば、患者さんから見ればあなたも立派な医療者の一人です。
患者さんはあなたの肩書きよりも、「どう接してくれるか」を見ています。
だからこそ、言葉遣い・態度・姿勢には丁寧さと敬意をもって臨みましょう。
たとえ年下の患者さんでも、敬語で、礼儀正しく関わることが信頼につながります。
挨拶と自己紹介は、信頼関係の第一歩
患者さんと関わる第一声、それが「挨拶と自己紹介」です。
しっかりと目を見て、明るい声で「おはようございます」「失礼します」と挨拶するだけで、印象は大きく変わります。
そして笑顔も忘れずに、患者さんが安心して関われるなという印象を持ってもらえるように意識して見ましょう。
また、患者さんの体調や状況に配慮しながら、声のトーンを調整することも大切です。
そのうえで、
「〇〇学校の△△と申します。今日からこちらの病棟で実習させていただきます。何かあればすぐにスタッフに伝えますので、よろしくお願いします。」
というような、簡潔で安心感のある自己紹介ができるとベストです。
患者さんも安心して接してくれますよ。
会話中にも“観察”を忘れずに
患者さんとの会話は、単なるおしゃべりではありません。
- 表情はどうか
- 声のトーンに変化はないか
- 目線が落ちていないか
- 呼吸は穏やかか
- 手は震えていないか…
こうした微細な変化を見逃さず観察することも、実習で大切な力です。
情報収集は“聞く”だけでなく、“気づく”ことも含まれているのです。
“聞く力”がいちばんの信頼関係をつくる
患者さんは、自宅とは違う緊張や不安を抱えて入院しています。
そんな中で、笑顔で話しかけられること、耳を傾けてもらえることは、何よりの安心になります。
私たちは家族でも、長年の友人でもありません。
でも、“頼っていい存在”であることを伝えることはできます。
だからこそ、「この学生さんになら話してもいいかな」と思ってもらえるように、聞く姿勢・心を込めた表情・うなずきを意識してみてください。
たとえ短い関わりでも、
「あなたに話してよかった」
と思ってもらえるような、あたたかい傾聴を大切にしてくださいね。
【コミュニケーションは“気持ちを引き出す”支援でもある】
患者さんが今どんな思いを抱えていて、何を大切にしていて、どうしていきたいと思っているのか。
その想いや希望に耳を傾け、一緒に言葉にしていくこと。
それが、コミュニケーションのもう一つの大切な役割です。
あなたとの会話が、患者さん自身が気づいていなかった感情に気づくきっかけになるかもしれません。
患者さんにとって、“自分の気持ちを言語化する”ことは、安心にもつながり、その後の医療やケアの方向性にも影響します。
【助産師として関わる私の実体験】
私も日々、助産師外来で産後のお母さんたちとお話しさせていただいています。
お母さんたちは毎日赤ちゃんのお世話を頑張っている中で、
- 「授乳方法はこれであってるのかな…?」
- 「もっと上手におっぱいを上げられるはずなのに、、、。」
- 「ミルクの量はあっているのかな、赤ちゃんはもっとほしいのかな、あげすぎなのかな?」
と、迷いや不安の中で育児をしています。
そんなとき、私は「その気持ち、よくわかりますよ」とまずは受け止めることから始めます。
正しい答えを押しつけるのではなく、相手の背景や気持ちに耳を傾けて、一緒に考えていく時間を大切にしています。
【“あなたはどうしたいですか?”という問いがもたらすもの】
そして私が助産師外来でお母さんたちと関わるとき、
その状況に合ったアドバイスをさせていただいた上で、
最後に必ずお聞きしていることがあります。
「お母さんは、どうしていきたいですか?」
「ご自身では、どうしたいと感じていますか?」
育児には、“これが正しい”という唯一の答えはありません。
大切なのは、その人自身がどうしたいのか、どんな子育てをしていきたいのかという思いです。
お母さんとご家族の生活のリズム、価値観、やりたいことに合わせて、
その人なりの育児を築いていくことが、**そのご家庭の“正解”**になるのです。
【それぞれの正解があっていい】
もちろん、赤ちゃんの命に関わるような重要な判断や、成長・発達に合わせた助言は、専門職として必要なことです。
でも、育児や生活のスタイルにおいては、“お母さんの考えが正解”になるのです。
どのやり方がいいかを、私たちが一方的に決めることはできません。
患者さんやお母さん自身が、話す中で自分の気持ちや考えを整理し、自然に答えを見つけていけるように、
そのお手伝いをするのが私たちの役割です。
【その問いかけは、学生さんにもできること】
これは、患者さんとの関わりにも通じます。
「どうしたいと思っていますか?」
「どんなふうに過ごしていきたいですか?」
そんな一言が、患者さん自身が自分の気持ちを見つめなおすきっかけになることもあります。
情報を集めるだけでなく、相手の力を引き出す関わりを意識してみてください。
【“話せない”と悩む前に、主語を見直してみよう】
学生の皆さん。
実習中や見学で、患者さんとどう話せばいいかわからず、
「緊張してうまく話せなかった…」
「何を話したらいいかわからない…」
そんなふうに悩むこと、たくさんあると思います。
でも、そのときに、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてください。
「今、私の主語は“自分”になっていないかな?」
「自分がどう見られるか」「うまくできるか」
そう考えるのは自然なことです。誰でも通る道です。
でも、**コミュニケーションの主語は“患者さん”**のはずです。
「この患者さんは、どうしてほしいのかな?」
「何を感じているのかな?」
その視点に立つことができたとき、
言葉に詰まっても、沈黙になっても、ちゃんと“つながる関わり”ができます。
もちろん、初めは自分のことに精一杯でも大丈夫。
でも、私たちの仕事は「患者さん」が主語です。
患者さんがどうなりたいのか、どうすれば安心して過ごせるのかを考えることで、自然と寄り添った関わりができるようになります。
どの診療科でも通用する“関わり方の姿勢”
このコミュニケーションの基本姿勢は、産科・内科・外科など診療科に関係なく共通しています。
- あいさつを丁寧に
- 目を見て話す
- 相手の言葉に耳を傾ける
- 状況をよく観察する
この姿勢さえあれば、どんな場面でもあなたらしいケアができますよ。
自信をなくしたとき、思い出してほしいこと
患者さんとうまく関われなかった、指導者に注意された…
そんな日は落ち込むこともあるでしょう。
でも、うまくいかなかったからこそ気づけたことがあるはずです。
実習ノートには「反省」だけでなく、「できたこと」や「気づいたこと」も書いてくださいね。
小さな前進が、いつか大きな自信になります。
“今のあなた”が、未来の力になる
助産師・看護師という職業は、患者さんを支えるために、日々学び続けることが求められます。
だからこそ、今日悩んだこと・考えたこと・丁寧に関わろうとした時間は、
必ず未来の誰かを支える力になります。
立ち止まりそうな日も、自分を責める夜もあるかもしれません。
でも、あなたのその頑張りは、ちゃんと形になっています。
🌈さいごに:あなたの関わりは、必ず誰かの支えになっています
学生という立場でも、あなたの存在は、患者さんにとって意味のあるものです。
上手に話すことや、立派なアドバイスができることよりも、
目の前の人を思って関わる気持ちが何より大切です。
だから、自信がなくても大丈夫。
まずは、「あなたが主語の関わり方」から、「患者さんが主語の関わり方」へ。
少しずつ視点を変えていきましょう。
あなたの一言が、あなたの笑顔が、
きっと誰かの安心につながっていきますよ。
コミュニケーションに正解はありません。
大切なのは、「この患者さんのために何ができるだろう」と考える姿勢です。
あなたのまっすぐな想いとやさしさは、
きっと患者さんの心に届きます。
大丈夫。
自分の言葉で、笑顔で、あたたかく関わろうとするあなたを、私は心から応援しています。

miu|助産師・2児の母・ブログ運営中
20年以上、病院で助産師として勤務。新人時代の不安や戸惑い、子育てと仕事の両立に悩みながらも、周りに支えられてここまできました。
このブログでは、助産師学生・看護学生、そして働くママたちが「今日もがんばったね」「ちゃんとやってるよ」と、自分を優しく認められるような言葉を届けています。
あなたがちょっとだけ元気になれる、そんな場所になりますように。